株式譲渡契約書(M&A)①

 日本の企業数は、約421万社(経済産業省 工業統計表2006年)。そのうち上場してる会社は3944社(日本取引所調べ6月21日現在)上場企業比率0.09%

 日本の企業の99.91%は、上場していない。上場していない会社の株式売買は、相対取引(金融商品取引所を介さず、売り手と買い手が直接に、価格、数量などを合意する取引方法)となります。

 だれから、どのくらいの株数を、いくらで買うのか? 契約書を作って署名捺印をして終了という感じではマズいのです。会社を売却するというのは、発行済株式の過半数以上の株式を売却するといって差し支えないと思います。過半数の株式で、過半数の議決権を行使でき、取締役の任命、解任が可能となります。つまり、自由に経営する事が可能となります。

 会社売却(過半数以上の株式の売却)には、会社そのものを売値に見合うか適正価格か?買手が調査する必要があります。それをデューデリジェンスと言います。英語表記で「Due Diligence」(適正な評価手続き)買収対象としてふさわしいか?損失を被らないか?など複数の角度からリスクとリターンを調査します。目安という相場は、純資産+営業利益の2~3年分の価格。EBITDA(税引前利益に支払利息、減価償却費を加えて算出される利益)倍率×3~5倍。しかし成長性があって、ブレが少なく(低リスク)、投下資本利益率(ROIC)がいい会社は、目安や相場に構わず高い値段で交渉する余地が大きい。もちろん材料があっても、買手を説得する論理が必要。

 全体の流れとしては、交渉開始、秘密保持契約、基本合意契約、株式譲渡契約書の作成と交渉、表明保証、誓約事項、前提条件、デューデリジェンス、バリエーション、クロージング又は解除、補償

 M&Aの契約は、会社法、商法、判例で組み立てられた契約ではなく、英米法を基に組み立てられた契約である。なので英語表記の意味が分からないと、なかなか理解ができない。

M&A・・・「Mergers(合併) and Acquisitions(買収)」の略。意味は、「企業の合併や買収」のことで、2つ以上の会社がひとつになったり(合併)、ある会社が他の会社を買ったりすること(買収)

デューデリジェンス・・・「Due Diligence」(適正な評価手続き)通称略して「DD」買収する会社に対する買手企業の「調査」。調査対象は、ビジネス面(事業の安定性と成長性)、財務面(財務諸表、借入状況)、法務面(許認可を得ているか?訴訟をかかえているか)、買収の障害となる事項の有無や内容、買収対象の適正価格か

アーン・アウト・・・(Earn Out) 対価の分割払いを行う仕組み。調整方法。合意した目標業績を達成した時に追加で買手が売手に支払う条項。売手と買手、双方の主張の乖離を埋める為とか、買手に引き渡すまで、業績が下降しないようにする為の工夫。

クロージング・・・(Closing)経営権を移転する為の最終手続き。株券の引渡しと代金の支払い。株式譲渡契約から、1か月以上あとに株券の引渡しと代金の支払いが行われる。クロージングの前提条件があって、満たされなければ、株券の引渡しと代金の支払いが行われず、契約の解除となる。なぜ解除になるかは、事前に決めた売主や買主の義務の条件が充足されなかったから。双方に義務があり、双方に権利がある。株式譲渡契約をしてデューデリジェンスを経て、前提条件が満たされれば、契約の履行、満たされなければ解除という流れ。

タイムリミット・・・(Long Stop Date)クロージングの前提条件の充足に時間制限を設けて、その期間が経過すれば契約の拘束から解放する為、契約を解除しましょうという合意。

表明保証・・・(Representation & Warranties)契約当事者の一方が、一定の事実が真実であり正確であることを保証するもの。クロージングの前提条件に含まれて、数か月のデューデリジェンスでは、調べ尽くせず辿り着けない情報は、買収対象会社の取締役などに「事実がある事、また事実がない事」を表明し補償してもらう事。例えば、簿外債務はありません。税金の滞納はありません。許認可は受けています。など。違反すると、クロージング前だとクロージングに至らず。後だと金銭での補償となる。
 ここも、「知る限りは」とか「知りうる限りは」など緩める書き方もある。前者と後者の違いは、調査をするかしないかの違い。知りうるとは、一般的な調査をした結果。
 価格調整機能と情報開示促進機能が、表明保証となる。

コベナンツ・・・(Covenants)当事者に対して一定の事を行う事、行わない事を約束する事。
 クロージングより前のをプレ・クロージング・コベナンツ。後のをポスト・クロージング・コベナンツという。
 クロージングより前にやる事は、他の契約に「経営上大きな変化があった場合は、解除する事ができる。」が条項にあった場合、そこをフォローしておいて下さい。とか許認可関係での手続き、役員の辞表を取りまとめておいて下さい(買手側が経営権を入手してから解任すると損害賠償が発生する場合がある)、売手ばかりでなく買手にも、グループで売上200億あって、買収する価格が50億以上なら独占禁止法の手続きをして下さいとか。
 クロージングより後は、従業員の雇用継続についてなど

ファイナンス・アウト条項・・・買主が買収資金を調達できなかったら、取引義務を負わない。買主が有利な条項。

MAC条項・・・(Material Adverse Chang)譲渡契約の締結日からクロージングまでに、対象会社に重大な悪影響が生じていないことが、買手側の義務履行の前提条件として定められる。後発重大リスクを売主に負担させる条項。売主は、条項に入れないでと求められる。

ノー・トーク条項・・・(No-Talk条項)売主(売却対象会社)と第三者との対抗提案につながる協議・交渉を禁止する条項

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