新民法対応 契約審査手続マニュアル 単行本 – 2018/3/5 愛知県弁護士会 研修センター運営委員会 法律研究部 契約審査チーム
作家イザヤ・ベンダサン氏(山本七平氏)の約40年以上前著書「日本人とユダヤ人」でこのように述べています。 「日本人は水と安全はタダと思っている」
時は流れ、水はミネラルウォーターが普及しコーヒーや炭酸飲料と値段は変わらない。安全もセキュリティーソフトやセコムなど無料という概念はなくなった。派生して「水と情報はタダと思っている」と聞いた事がある。良好な人間関係で好意によりタダで!「えっ?ダメ」「教えてくれたっていいじゃない?減るものじゃないし。ケチ!」それはサービス業に対する社会的評価の低さと専門知識に対する認識不足なのかもしれません。
専門知識をゼロから「教えるレベル」まで持って行くのは、時間、労力、資金を投資しないとなかなか難しい。それも細分化、専門化した社会経済では、いくつも専門知識を内製化するのは、ロスにつながる。例えば、レストランの内装のデザイン。ゼロから自分で学んで、「人の感情に与える色から~」それでは開店までの資金計画が立たない。自分のイメージをデザインに反映させるデザイナーに依頼すれば、自分のデザインをゼロから学ぶ時間、労力、資金をコンサルティング契約料に比べて節約できる。
① コンサルタント契約とは、受託者の高度な専門知識、豊富な経験に基づくアドバイス提供を目的とする契約です。受託者の専門性や経歴、資格などは、事前に十分調査して検討しましょう。あと契約までは、熟練コンサルが対応して、契約後はメソッドを学んだ新人が多量に配置される場合があるので、契約の条項で「過半数は業務歴〇年以上の社員とする事」また、再委託条項があって、熟練コンサルが営業から契約までして、後は再委託して利ザヤを抜くやり方もあります。いずれも契約の条項で作れてしまうドラマなのです。雛形では「再委託には事前に書面による承諾が必要」と書いてありますが、再委託の予定なら、契約時に説明する。そして承諾なくても再委託できるように条項を整える。準委任契約なので修正表記が必要。
② コンサルティング契約とは無形のサービス提供です。対象の業務内容が曖昧で、委託者のイメージとは一致しない場合が多いです。委託者の期待が大きく認識の齟齬のズレ幅が広いと後々料金返還訴訟という形の紛争になってしまいます。なので事前に合意して契約書に落としておかないといけません。まず具体的に業務内容を盛り込む。業務の特定。どういうサービスを提供するのか?どこまで実施すれば料金に見合うサービスを提供した事になるのか?それと委託業務から除外する範囲も表記する。続いて、毎月の業務にかける時間の上限や別料金がかかるケースについて。(助言は契約範囲内ですが、実施には別料金も申し受けます)
③ 業務の遂行方法を明確にする。コンサルティングを行う方法、場所、頻度など認識の齟齬が生じやすい。コンサル側は、電話かズームで月数回の相談助言のつもりだったが、お客さんは、「えっ?訪問しないんですか?重要な事って会って決めるものじゃないんですか? 現場も見ないで、何がわかるんですか? 本当に頼っていいんですか?」 契約書に何も書いてないと不信を抱くし抱かれる。双方「電話かズームで月数回の相談助言」で納得して、契約書のコンサル料を払うと払う事を合意できていれば何の問題にもならない。
④ 契約期間 コンサルティング契約というのは、業務委託契約の準委任という形態の契約なので、取決めがない場合いつでも解除できます(民法651条1項)
スポット契約か?期間契約か?期間の場合、中途解約や更新はどうするのか?中途解約について論点があるので以下に。
コンサルティング業務というのは、何かの問題解決を目的とするもので、恒常的な事務の委託を目的とするものではありません(顧問契約との違い)
問題解決には、たいてい最初の方に凄く労力(ノウハウや高度な知識や経験からの解決策の策定と実施計画と指示)がかかるものです。何事もゼロイチとか軌道修正とかの、変化を起こして軌道に乗せて安定航行に至らせる最初が、たいへんな労力が必要です。また成果が出るまで時間がかかります。
なので途中で解約されると報酬が見合わなくなります。中途解約を禁止する条項を加える必要があります。しかし、委託者側からすると、いろいろな事情(コンサル内容に満足できない、部門の撤退が決まってコンサルが不要になったなど)で解約できないのは不安。その場合、最低契約期間を設けてその期間前に解約する時は、違約金を払う条項を設けて合意するのが最善です。
⓹ 報酬
時間制(タイムチャージ・・・作業時間・拘束時間に応じて報酬が確定すること)定額制(月額、年額) 段階に応じた支払 着手金、中間報酬、成功報酬・歩合などがあります。報酬は合意により設定は自由です。
提供するコンサルティング業務に合った報酬支払方法を設定する事が必要。売上増加や集客の案件なら、前月からの売上、利益増に対して「増加額の〇%」など。そして紛争になりやすいのが、売上や利益に連動して報酬額を決めるパターン。コンサルによって増加した売上をハッキリ計上するのは難しい。もちろん下降状況がV字回復のような例外を除いて。どこまでの売上げを加えるのか?利益はどこまでの経費を差し引くか?算定方法を詰めて契約時に合意して明確にしておかないと、紛争につながりやすい。
上記のような特定の案件に限らない継続的なコンサルト業務の委託なら、月額報酬制をとる場合が多い。
⑥ 著作権の取り決め
委託先に提供する予定の資料(分析内容、提案書、レポート)などの委託者の為に作成した著作物は、(汎用的著作物で、今後他社へのコンサルで使う可能性があるものを除いて)引渡しと同時に譲渡する。
⑦ 報告義務
毎月末日までに、本件業務の遂行状況を書面にて報告しなければならない。契約書に書かなくても、準委任契約では、受託者は作業の報告義務を負っています(民法645条)しかし、「書面で」「毎月末日」と契約書に書かないと、電話やラインで簡単に済ませられるし、数か月に一回の頻度にする事も可能。委託者側有利条項として「委託者が必要と求める場合、資料と報告を求める事ができる。などの条項も入れる。
⑧ 秘密保持
第三者に再委託する場合は、その方とも秘密保持契約を交わして下さい。第三者が情報漏洩したら、責任を負うものとする。コンサル有利条項なら「再委託者が第三者に開示、遺漏しないよう努めなくてはならない」
⑨ 契約の解除
無催告解除は、重大な契約違反、差し押さえ、不渡り、など一般条項と同じ
➉ 契約上の地位・権利義務譲渡の禁止
再委託ではなく、契約上の地位・権利義務を譲渡をしてしまったら、契約そのものが意味がなくなってしまう。
⑪ 反社条項
警察がモデル条項例を出してますが、(売買、媒介、不動産、建設など)重いものが多い。それより、1条で反社に所属してませんね?将来も所属する予定はありませんね? 2条で自ら及び反社を使って、反社的な言動や要求の通し方しませんね? 3条で上記の場合は、催告なして契約を解除しますよ。4条で、解除して損害がでた場合に解除した側は損害賠償責任を負いませんよ。でいいと思います。
⑫ 協議条項・合意管轄
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