特許通常実施権許諾契約

契約書のツボとコツがゼッタイにわかる本[第2版] 単行本 – 2020/3/24 萩原 勇 (著)

ライセンス契約で、特許権者(ライセンサー)特許の許諾使用者(ライセンシー

特許の「実施」とは、特許が「物の発明」の場合は、その物を生産、使用、譲渡、輸出、輸入する等の行為、特許が「方法の発明」の場合は、その方法を使用する行為、特許が「物を生産する方法の発明」の場合は、その方法を使用、その方法により生産した物を使用、譲渡、輸出、輸入する等の行為を指します(特許法第2条第3項)。

 そもそも特許権者は、業として特許発明の実施をする権利を「専有」していて他人が無断で特許発明の実施をしている場合は、特許権侵害として、差止請求等の権利行使をすることができます。その為特許発明を実施したい第三者は、特許権者から実施の許諾を受ける必要がある。

 通常実施権の「通常」とは、特許法上、実施許諾権は「専有実施権」と「通常実施権」の2種類が定められていて、通常実施権は、更に「独占的通常」と「非独占的通常」に分かれている。実質3種類の実施権がある。

 専有実施権は、物権で不動産で言えば地上権なようなイメージで、「登録」が必要で特許権者は、他の人に実施権を設定できない。専有実施権者のみの許諾になる。また特許権者が自ら実施することもできない。また特許侵害者に対して、自ら差し止め請求や損害賠償をすることができる。

 通常実施権は、「独占的通常実施権」と「非独占的通常実施権」に分かれていて債権という位置づけ。独占的通常実施権は、登録は不要で契約条項で、特許権者の自己実施が可能となる。差し止め請求はできないが、特許侵害者に損害賠償はできる。一方の非独占的通常実施権は、同一の内容の通常実施権を何人にも許諾でき、何ら独占されてない権利。商標権で言えば、コンビニの看板やロゴは、非独占的通常実施権。この実施権は、契約条項がなくても特許権者が自ら実施できる。また侵害者への差し止めや損害賠償ができない(特許権者が行う)

 契約条項、まず(定義)特許の特定は、「出願番号、特許番号、発明の名称。」本件製品、「何を作る為に使うのかと特定」正味販売価格、改良技術(本特許を使って発明)

(実施許諾)許諾の種類と許諾地域。例えば非独占的通常実施権を国内のみに限って許諾するなど。

(対価)一時金イニシャルペイメントと継続実施料ランニング・ロイヤリティーを組み合わせるのが一般的。そして集計の期間と支払期日の特定。例えば毎月末日に集計を締めて、翌月末日までの支払い。加えて、支払いがされなかったときの遅延損害金の設定。

(実施報告)販売量や売上を報告する条項。実施料の基となる数字なので、監査の取り決めもする。誤差が許容範囲に収まれば、監査費用は特許権者が支払、超えてしまえば実施者が払う。

(対価の不返還)特許は取り消されたり、無効になったりする場合がある。また、対象特許が製品を作る上で関係なかった事が後々に判明する場合がある。その時にこの条項がないと、利息を付けての返金を迫られる。

(保証)特許権者が第三者の特許を侵害していない事を保証する。又は、保証しない。そして実施者の製品が、第三者に損害を与えた場合、法的、契約上の責任を負わない。など

(特許維持)特許は維持費がかかり、支払日から6ヵ月過ぎると失効してしまう。また、特許侵害者に対して差し止め請求を特許権者がしなくてはならない。契約条項で実施権者にさせる事もできる。

(第三者の権利侵害)特許権者と実施権者が協力して対処する。侵害を発見した場合の報告義務と協力義務。」そして費用負担の取り決め。

(改良技術)実施者が実施している特許に係る発明をして、特許出願する場合の事前通知義務と実施者が特許をとった場合、合理的な条件で実施を逆に今の特許権者に与える取決め。ここはエグイ条項を入れると独占禁止法にかかる。例えば、実施者の所得した新特許の譲渡義務。特許権者の特許を基にしてとった特許なのでよこせ。不公正な取引に該当する場合がある。

(表示)ディズニーのキャラクターグッツに付いてるようなシールやガンダムのプラモデルの箱にサンライズというシールが付いているイメージ。

(特許権の譲渡)特許権者の特許を第三者に譲渡する場合は、事前に実施者に通知する事。不動産の賃借人のように通知を受けた新たな家主に、家賃を払えば解決という訳にはいかない。特許権者から実施者に技術指導などが行われ、その対価も含んでいれば、新たな特許権の譲受人に支払を変えればいいという訳ではない。ここは丁寧な取り扱いが必要。

(不義務)実施者が、この特許は無効だ。また、有効性を争ったら、この契約は終了します。という条項。

後は、反社条項、解除、契約期間(終了後に残った特許製品の販売は〇か月まで)合意管轄

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