雇用契約書(就業規則なし)

労使トラブル円満解決のための就業規則・関連書式作成ハンドブック 単行本 – 2023/11/19 弁護士 西川 暢春 (著)

 上記の本は、とても優れています。良書です。縦26㎝ 横18㎝ 1241ページ。就業規則を作るのに心強い一冊です。労務関係の契約は、労働3法「労働基準法」「労働組合法」「労働関係調整法」が強行規定となっていて、当事者同士による合意でも、頻繁にその契約を裁判で否定されます。ほぼ労働者側に寄り添って判決がでる場合が多いです。

 就業規則は、常時10人以上の従業員を使用する使用者が作成して労働基準監督署に提出しなくてはなりません。代行を依頼できるのは、「社会保険労務士」か「弁護士(企業法務を扱ってる)」になります。

 「雇用契約書」(会社と従業員が労働条件について互いに合意したことを証明する書類)とどう関係があるかと申しますと、雇用契約の内容が就業規則があればリンクさせなければならない事です。そもそも雇用契約は、口頭でも成立します。雇用契約書は、絶対に必要ではありません。しかし、「労働条件通知書」は(労働基準法第15条第1項)通知が義務付けられている。通知内容は、労働契約の期間、契約の更新の基準、就業の場所(2つ記入。雇い入れ時、変更の範囲)、従事すべき業務(2つ記入。経理、会社の定める業務)、始業終業の時刻、休憩、休日、賃金、退職。絶対的明示事項と相対的明示事項(企業が制度を導入していれば明示)があります。
 ※有期雇用労働者(パート、契約社員は、「更新上限、通算雇用年数」。「無期雇用転換項目(1年契約を4回繰り返して5年。これを1日でも超えると無期雇用の申込ができて、会社側はその申し入れを拒否できない。申し入れた期間が終わった後に無期転換される。それを5回目の更新で書面で明示しなくてはならない)更に無期転換後の労働条件変更があるのかも記入する必要がある。無期雇用労働者は正社員を意味するものではない。

 雇用契約書と労働条件通知書は、ほぼ内容が一致するので、「雇用契約書兼労働条件通知書」という書式で、合意と法定通知を一緒に取り交わすのがいいかと思います。(内定時)に通知契約を交わす。入社日に通知すると、「こんな事聞いてない」という話になる場合がある。

労働条件通知書の内容は一覧で表示して、たとえ重複しても雇用契約書で記す。

雇用 雇用し賃金を支払う事を約束し、誠実に指揮に従い勤務する事を約する。と最初の条項で記す。

雇用期間 正社員は「期間の定めのない契約とする」(試用期間3か月。延長する場合あり)でパートタイムは最長3年。1年ずつ更新していくのが普通。累計5年を超える事に注意。

就業場所 本社、会社の所在する場所(トラブルになりやすいので丁寧な扱いと合意が必要。限定する書き方あり)あなたは転勤対象であり転勤があるという事を書面と口頭で説明する。

業務の内容 〇〇及びこれに付随する業務。必要がある場合、使用者の定める業務、指定する業務に変更できる。契約書を作る側が幅を持たせられる。広めに書いておく。特定業種のみで採用すると、他の業種変更できなきなる。職種限定採用は硬直性が伴う。

誓約 会社規則や業務命令等を遵守し信義誠実に勤務する。など機密漏洩しない、競合避止、名誉を棄損しない(ネットに書いたりしない)

就業・休憩時間 9時から18時就業。12時から13時休憩。8時間+1時間とする。残業があるかないか。使用者は、業務上必要がある時は、時間変更でき、ある場合、時間外労働を命ずることができる。事業によって変形労働制も活用

※労働基準法では、原則として、1日8時間、1週40時間までしか労働者を働かせることはできません。また、1週間に1日は休日としなければなりません。もし使用者がこれに違反すると、「6箇月以下の懲役又は30万円以下の罰金」という刑事罰が用意されているほど、この原則は強いものです。ただし、サブロク協定を締結し、それを労働基準監督署に提出することで、例外的に1日8時間・週40時間を超えて働かせても、また、1週間に1度の休日に労働させても、使用者は刑事罰を受けなくて済むことになります。このように契約自由の原則や当事者の合意より優先されるのが、強行規定(この場合労働法)

休日 土日祝日 有給休暇(年次有給休暇は、雇入れの日から起算して半年間継続勤務し、全労働日の8割以上出勤した労働者(管理監督者を含む)に、年10日の有給休暇を付与することが法律で義務となっています。)待遇を上げる合意は可能だが、下げる扱いは難しい。

休職 3ヵ月とする。3ヵ月を過ぎると自然退職とする。(この項目がないと自然退職が使えず、解雇という形をとらざるを得なくなる。)

給料 基本給や通勤手当など総支給額。加えて所定時間外手当の説明。就業規則があれば、「詳細は就業規則による」とリンクさせる。そして支払方法。毎月末締め、翌月25日払い。その他賞与、昇給など(~により支給しない場合がある、改定しない場合がある)記入。

懲戒 ここが雇用契約書の重要な個所。他の条項は、労働条件通知書の解説のような位置づけであったが、この懲戒は、やってはいけない事、やるべき事の確認ができる。例えば、無断又は正当な理由なく遅刻、早退を繰り返す、欠勤を繰り返す、業務命令に従わない、会社のPCなど私用目的で使用するなど別紙で最低20項目は記入する。

解雇 以下の場合30日前に予告し、又は30日分の平均賃金を支払って解雇する事ができる。身体、精神上の障害により業務に耐えられない時、著しい勤怠不良で改善の見込みがない、労働能率が著しく劣り、改善の見込みがない、事業の縮小その他やむを得ない事由がある時など

退職 1ヵ月前までに書面で退職を願い出て、使用者がこれを承認したとき、又は届けて2週間が経過した時、無断欠勤が連続30日続いた時、定年になった時、死亡した時など

その他事項 

提出書類 免許書コピー、源泉徴収票、年金手帳、身元保証書(5年更新)、資格や卒業証明書 (ちゃんと指定した書類を集めて提出するかで人間性が垣間見える。)

裁判管轄 労働裁判は、使用者に圧倒的に不利なので、裁判管轄は記入しない。雇用契約書や就業規則などは、経営者や真面目に業務を行っている社員を守る為にあります。問題社員の対処の為です。他所でトラブルを起こした方は、トラブルを起こしやすいです。真面目でない方は、入れない。そして、労働裁判に行かないようなるべく話し合いで解決する。

特定技能制度の実務―入管・労働法令,基本方針,分野別運用方針・要領,上乗せ告示,特定技能運用要領,審査要領― 単行本 – 2020/5/27 山脇 康嗣 (著)

 特定技能制度を使って外国人を雇用する場合、日本人以上に労働法令の厳守を求められます。外国の送り出し機関、日本の受け入れ機関、監査機関、違反すると、繰り返すと制度から排除され、特定技能上で外国人を雇用できなくなります。それは、相手国との約束で不当に労働させない。という事で、その担保が、労働法令を守らせる事と監査という形で制度設計されています。

定型約款(利用規約)

 Webサービスなどで必須の契約条項。アプリのサービス前に小さな文字の文章が沢山でてきて下にスクロールして「同意する」をクリックする様式。

 そもそも定型約款とは、「定型取引において、契約の内容とすることを目的としてその特定の者により準備された条項の総体をいう」民法548条の2第1項
 ではその「定型取引」とは、ある特定の者が不特定多数の者を相手方として行う取引であって、その内容の全部又は一部が画一的であることがその双方にとって合理的なものをいう。例えば、鉄道会社が乗客一人一人と旅客運送契約を結んでいたら、電車に乗るまでたいへんな時間と手間がかかるし現実的ではない。現実は、運送約款でカードで「ピッ」と駅で入場して乗車して「ピッ」目的地の駅で電子決済して後にする。乗客によって取引条件は変わらず、画一的に同じ条件(運賃)で利用できる。

 実際には、運送事業者が、営業規則で決められている「運送条件」を、事前に一定の場所に公告(お知らせ)し、旅客はこの条件を了解しているとの前提で、旅客輸送サービスを行っています。定型的な内容の取引条項を記載し、公告したものを「約款(やっかん)」といいます。民営鉄道各社の「運送約款」は、駅の事務所で閲覧することができます。「日本民営鉄道協会」

 鉄道、バス、旅行会社、銀行、保険、証券、クレジットカード、ネットサービス(会員規則)、フィットネスジムなど「取引契約の内容とすることを目的としてその特定の者(事業者)により準備された条項の総体」が定型約款といいます。会社が見込み客に対して一方的に作ったマイルール。

 「みなし合意」・・・事業者が勝手に作った条項を契約として合意の効果を生じさせる為には、利用規約が契約内容になると書かれていたこと。そして組入れ要件として2つ。1つは、ネットサービスなどで、契約前に利用規約と表示され、合意するというボタンをクリックさせる事(約款に同意した場合双方の契約内容となりますと表示)。2つ目は、合意前にあらかじめ定型約款を契約内容とする事を相手方に表示していたとき。更に公表をもってみなし合意とする事もある。

「不当条項規制」・・・相手方の権利を制限し又は義務を加重する条項や社会通念に照らして、信義則に反して相手方を一方的に害すると認められるものは、無効となります。契約期間の途中解約には、多大な違約金がかかる(キャンセル料)、故意重過失を含め損害賠償は負いません(不当な免責)。不意打ち的な支払(不意打ち条項)など

利用規約の変更・・・契約というは、一方が勝手に変更はできず、お互いの合意がないと認められないものです。しかし、定型約款である利用規約は、合意不要で一方的に変更が可能な例外項目があります。まずは、相手側の一般の利益に適合すること(利益変更)そして合理的非利益変更。まずは、定型約款に変更することがある旨の規定。そして、変更が契約した目的に反せず、変更の必要性があり、変更後の内容の相当性(ガラッと変えるとマズい)、最後に変更内容の周知の手続き。それで。みなし合意で変更が有効になる。

 企業側が自由に条項を組み立てる事ができますが、消費者契約法や特定商取引法などの強行規定を踏まえないと大事な条項が無効となる恐れがあります。その他ビジネスモデルによって対処しなければならない法律があります。(個人情報保護法、著作権法、資金決済法)また、自社のサービスでトラブルを想定して、対処する条項を充実させていかなくてはならない。(禁止事項、破ったらペナルティー、利用停止、契約解除、免責事項)

本規約の目的、本サービスの利用規約、届出内容の変更、委託、利用料金、禁止事項、契約者の個人情報の取扱い、本サービスの一時停止、本サービスの利用の禁止及び利用契約の解除、退会・契約者による解除、本サービスの終了、免責事項、契約者の損害賠償責任、譲渡禁止、通知、準拠法、合意管轄裁判所、本規約の変更(変更日履歴付)

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OEM取引基本契約書

ローソンの麺つゆ、つゆ濃縮3倍、500ml  「製造者ヤマキ」の作った商品を「ローソン」が販売している。温かいうどんによく合う。ラベルだけ変えているのではなく、既存のヤマキのめんつゆと全く違う。(ローソンしか売ってない。別のヤマキのめんつゆと味比べしてみた。)別味で作っている。

 流通業者の販売ブランドは、PB(プライベートブランド)と呼ばれ、PB商品製造委託基本契約書で締結されるが、内容はOEM取引基本契約書とほぼ同じである。

OEM取引とは、「Original Equipment Manufacturing」の略称で、委託者が企画、設定、デザインを生み出し、委託者のブランドで受託者が商品を生産する取引。スマホ、家電、自動車等の製造業で利用されている。契約の法的性質は、請負契約、又は売買契約となる。

初期費用がほとんどかからない。工場用地を確保して、建物を設計して、建てて、ラインを作って、従業員を雇ってオペレーションの訓練をして・・・全てカットできる。

開発や管理コストの削減。受託企業の製造ラインを使って製造できるのでウインウインの関係。また委託者は在庫リスクも負わなくていい。受託者は最低発注量の設定を求める事ができる。そして工場の稼働してない時間を使える。

発注者は、出来た商品を買うので、少ないロットで発注できる。しかも、書品ラインナップを増やす事ができる。

デメリットは、納期と品質管理。受託工場は、本来の自己製造を優先するので納期の面で後回しになる。品質管理は、各工場によって、ばらつきを注意しなくてはならない。良い工場と取引する事が大切。

 時間がかかる。打合せが長くかかる。

 デザインを詳細設計して受託者に送って、組立図面を返して、打ち合わせをして、試作を作って、生産へと進む。美味しい一皿に何工程も詰まっているように、委託者と受託者、細部まで詰める打ち合わせが必要。

 そして契約上の注意点

契約の性質は、完成したものを購入する売買契約か、請負契約とするかを明確に

商品の特定、生産品の仕様は、詳細に表記してますか? 外観、機能、性能、保守内容など、更に、試作品や金型、同封する取扱い説明書の作成まで長くなるので、別紙1で纏める。規定外の必要項目は、その都度協議する。

商標の取り決め。委託者の商標が流用(第三者に商品を販売)されないように、委託商品のみに使用と条項を入れる。商標を貼る場所の指示、また類似商標の登録出願しない事。

発注予想、発注保証、最低購入数量の取り決め。委託者有利なら予想。受託者も、生産準備して、少量の発注だと赤字になってしまう。

個別契約。納品のどのくらい前に発注するのか?の取り決め。工場も本来の生産を優先するので、スケジュール管理が重要。そして納品場所と検査。受入検査は、委託者が双方あらかじめ合意した方法により行う。足りなかった場合や不具合があった場合の取り決め。普通の売買取引基本契約と同じ。

(競業の禁止、模倣の禁止)自社コンテンツやノウハウが流れてしまうリスク。禁止する範囲を限定しないと受託者には、大きなリスク。例えば、「委託者の事前の書面による承諾があった場合を除いて本製品と同一又は類似の製品を販売してはならない。」当方と契約中は、とか年数で区切ったり、話し合い次第。
 受託者の力関係が強ければ、「めんつゆ」の例に戻ると、ヤマサ醤油はファミリーマートとセブンイレブンの両方のプライベートブランドの「めんつゆ」を作っている。

再委託の基本禁止。事前に文書での承諾が必要で、再委託するなら、再委託先にも委託先と同水準の責任を負担して下さいねという条項。自社コンテンツやノウハウを守る場合、再委託先にも秘密保持契約を結んで頂く。

製造物責任。商品に欠陥があった場合に責任をとってくださいという条項。製造物責任法で、製造した製品の欠陥で第三者の生命、身体又は財産に損害を与えた場合、製造者が責任を負う法律。ただ委託者の設計や委託者の供給した材料が原因なら、それを受託者が立証すれば免責される。

 秘密保持契約をして、知的財産権の取り決めなどして、あとは普通の製造請負契約と同じ。

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自動車売買契約書(登録自動車の名義変更)

登録自動車の名義変更の必要書類

① 譲渡証明書(車検証と印鑑証明書の内容を基に書き、売主の実印を押す。買主は押印不要)

 委任状(双方の実印押印)

 印鑑証明書(売主、買主)

 車検証車検証(所有者が売主になっているか)

⓹ 車庫証明書 (買主の使用地の管轄警察署)

 自賠責保険証明書(期限内でナンバー、車体番号と合っているか)

 自動車納税証明書(毎年5月中旬頃届く。税金滞納車は車検とれない。売主が紛失した場合は税務署で再発行を受けてもらう)

 リサイクル券(車両購入時に前払いした証明書)

必要書類ではないがあった方がいい書類

  売買契約書(免許書を確認して番号を控え、読んでサインをしてもらう)

陸運局へ

手数料納付書(陸運局の備え付け用紙。印紙を貼り、名義変更なので売主のナンバーを提出して、代わりに受け取るシールを貼る。)

OCR用紙(第一号様式)  (陸運局の備え付け

名義変更の後 自動車所得税・自動車税申告書 (だれから、だれに何によって名義変更され、だれが税金をはらうのか)

旧ナンバーは買主にレターパックで送るのがスマート

支払と車両の引渡し(名義変更書類引渡し

個人間の売買はトラブルが多いので、やるべきことを慎重に

① 車両をグルッと見て、へこみ、傷がないか?エンジンルームを開けて違和感(本来直線の骨組みがへの字に凹んでないか?本来付いているネジが付いてるか?オイルが漏れてないか、水が漏れて滲んでないか、バッテリーは固定されているか、そしてエンジンかけてから再度見る 異音する場合がある)がないか?

② 走行距離と車検証を照らし合わせる。

理由を付けて見させてくれない売主もいる。安いには、安い理由があり、うまくいく場合もあれば、トラブルに会う場合もある。なので、間に業者を入れない場合は、最低、契約書を巻いてリスクを低下させる。

売主が、印鑑証明書など渡してくれなければ名義変更できない。また、買主が名義変更しないで使用し続ける場合もある。車両の点検が終わったら、「必要書類とお金の交換」に重点を移す。勿論、車両点検でおかしな点があれば、取引は中止。見過ごして後で契約解除するのは大変。そして必要書類がないと、決済できない。勿論契約書のサインと同時に返金を渡し、必ず領収書を受け取る。
 書類は、後から送るという形をとるなら、書類を受け取ってから振り込みます。という形が正しい。間に車屋さんがいない以上、自分がしっかりやらなければならない。騙し合いという前提で、慎重に。

後で後ではトラブルのもと

建物賃貸借契約書

3訂版 徹底解説 不動産契約書Q&A 単行本 – 2023/7/30 官澤綜合法律事務所 (著)

 戸建やマンションを不動産会社や保証会社を入れないで貸す方(大家さん)向けの内容を記します。
 まず、入居審査。ここが一番大事です。いろんな人がいますから、取引自由の原則がありますから、契約以前の方とお取引しない事が大切です。 自分の設定した条件に合う方と賃貸借契約を結びます。保証会社が入ってない以上連帯保証人は必要です。保証の極度額の表示が必要です。

 依頼や売上にはつながりませんが、国土交通省のホームページに掲載されている保証人付きの契約書が優れています。以下の青字をクリックするとジャンプします

「賃貸住宅標準契約書」

「賃貸住宅標準契約書」は、賃貸借契約をめぐる紛争を防止し、借主の居住の安定及び貸主の経営の合理化を図ることを目的として、住宅宅地審議会答申(平成5年1月29日)で作成した、賃貸借契約書のひな形(モデル)です。 標準契約書は、その使用が法令で義務づけられているものではありませんが、この契約書を利用することにより、合理的な賃貸借契約が締結されて、貸主と借主の信頼関係が確立されることを期待し、広く普及に努めています。との事です。

 重要事項説明は、不動産の売買や賃貸借契約において取引業者が入って媒介を行う場合、宅地建物取引業法35条に基づき、重要事項説明書を交付して、必ず宅地建物取引主任者が説明することが義務付けられています。

しかしながら、こちらの義務はあくまで媒介業者が媒介を行う場合だけで、個人間で直に売買、賃貸借契約を結んだ時は不要とされています。

 設備の欄の冷暖房設備にカッコをつけて「エアコン 残置物」と記入しておけば故障しても、本来貸主の義務である修理を借主に「残置物なので修理するなら、ご自分の費用で、取り替えるのでしたら、処分してください」と言える。エアコンは耐用年数10年で、家賃収入が低いと大きな負担となる。退去時のエアコン清掃は、契約特約で借主の負担にできる。

 住居賃貸借契約は、自由に条項設定できる事が少ない。といのも、強行規定の「借地借家法」や判例で何重にも、借主が守られているから。例えば、契約書に「家賃を1か月でも滞納したら、債務不履行により契約を解除し即退去」を特約で入れてもその通りにならない。判例により家賃滞納には、「信頼関係の破壊」という概念がからんできて、1か月では破壊されず、3か月以上が目安となってきます。

 もちろん強行規定ばかりではなく、例えば「造作買取請求権」民法では認められているが、任意規定なので契約で否定して買い取らないと決められる。借主が「貸主の同意を得て畳みを入れ替えて、退去する時に貸主に時価で買い取って」と請求できる権利です。契約に買い取らないと書いておかないと、買い取らないといけなくなる。

 上記の「賃貸住宅標準契約書」の(契約期間及び更新)第2条の「更新料」は記入されてないので、6ページの特約として、「更新料は、現家賃の1ヵ月分とする。」と記入する。更新料の金額を書いてないと揉めます。更新料は有効です(H23年7月15日 最高裁判決)

 自分で使うなど正当な事由がない場合、貸主からの解除はなかなか認められません。6か月前からの貸主からの解約通知が一般的に必要です。

 用途は特定されてますか(居住、事務所)、家賃滞納に対して遅延損害金が設定されているか(契約書に記述されてなければ3%、設定上限は14.6%)

「土地賃貸借」
 駐車場とかは別として、借主が建物を建て居住する前提で貸す場合、強行規定の借地借家法が適用となます。 最低契約期間が30年で原則更新。まず返ってこないです。「貸したら取られたと思え」と言われるゆえんです。

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不動産売買契約書

新版 すぐに使える 不動産契約書式例60選: 契約実務に必ず役立つチェック・ポイントを注書 単行本 – 2023/12/16 黒沢泰 (著)

 不動産会社に仲介を依頼をすれば、宅建士が不動産売買契約書を用意し(宅建協会の会員はハトサポというサイトから契約書を入手できる)、重要事項説明などをする為の調査もしてくれる。しかし、仲介手数料は、3%+6万円+消費税(3000万円の物件で105.6万円)
 ただし売主から直接、不動産を購入する場合は仲介手数料を支払う必要はない。そこで、以下の文章は「不動産会社を間に入れず、売主と直接取引をしよう。」というお客様向けの内容と致します。

 新築住宅(完成から1年以上経ってない、まだだれも居住したことのない物件)は建設会社と不動産会社が売りにだすので、対象は、中古戸建と中古マンションで話を進めます。

「中古戸建」
 予算があって気になった物件があったら、内見の前に現地調査。昼と夜の2回は必ず。所在地の昼の顔、夜の顔がある。駅から何分(15分以上あると売る時たいへん)、坂はあるのか、買い物に不自由しないか、夜の明かりはどうか、騒音出す人いないか、物件は4m道路に2m以上接しているか(建築基準法第43条)、私道負担は(入り組んだ道路で行き止まりの場合など、管轄の役所等の建築指導課に聞く。それは内見の後でよい)、住んでいる人はオーナー(売主)か賃借人か、境界標(境界に矢印が彫ってある石など)があるか、越境してる樹木があるか、擁壁があるか(水抜き口確認)
など

 現地調査をクリアしたら、内見の申込。売主に会ったら、「どうして今回売りにだされたのですか?」と売却理由を軽くポンっと聞いてみる。正直な人なら「いや~近隣と揉めて・・・」トラブル含みなら、ご自身で住むならほどほどに内見して帰られて、諦めた方がいいです。
 「外側」。外壁の痛み具合、基礎にヒビが入ってないか、ガスは都市ガス、プロパン、オール電化、温水器(一般的に耐用年数10年、取り替えると25万円以上)、敷地内に越境物はないか、傾いてないか、そして「室内」へ、全部の部屋を体重乗せて歩く(メシメシと沈まないか、床が腐蝕してないか)、全ての扉を開ける(開けずらい、引き戸が引きずらい、詰まれば、家が傾いているか歪んでいる可能性)、天井クロスの確認(染みてたり、特に角が染みてたりは雨漏り)、匂いもかぐ(カビ臭い)、水回り設備(給水器の調子や耐用年数、蛇口、流しの下の排水管、トイレに水漏れはないか、風呂)エアコンの製造年を確認(耐用年数)

 そして権利関係。法務局(不動産の所在地の管轄)で登記簿謄本(全部事項証明書)を手数料を払い入手する(行ってもいいし、オンラインで郵送してもらってもよい。契約書に記入する地番なので必ず必要)。行くなら公図、地積測量図もあれば入手する。登記簿謄本には、3つのカテゴリーがある。表題部、甲区、乙区がある。表題部に所在地(住所番号とは違う場合あり)、甲区(所有権、過去と現在の所有者)、乙区(所有権以外の権利、抵当権など)所有者確認。所有者(名義人)でない人と(仲介不動産屋さん以外)話を進めても、危ない。(本人の親戚とか友人とかおかしい)。そして乙区、抵当権が付いていたら、個人間売買は避けた方がいい。本来、抵当権を抹消してから、売却と同時に抹消が最低ライン。売主と買主以外にお金を貸してる人(銀行など)第三者がいるので、三者で話をまとめないといけない。抵当権が乙区に書いてあると、買ってしばらくして、売主が支払を止めると抵当権実行されて所有権を失う場合がある。又は、抵当権消滅請求という手続きで、購入代金の他、更に抵当権者(銀行など)に支払わなければ、完全な所有権を得られない。
 世の中いろんな人がいるから、売手が抵当権を外す手続きをしないで、「絶対迷惑をかけない。払ってきたので、これからも払う。給料明細と念書を入れる」とか言われたら、拒否して撤退しなければならない。

 次に市役所に行って、都市計画課で市街化調整区域に入ってないか確認。物件が再建築できるか確認。続いて、登記簿謄本を持参の上、建蔽率、容積率を確認して建築基準法に違反してないか確認。建て直しの予定もなく、売る予定もなくても、住宅ローンの融資条件の一つに担保評価という項目があり、建築基準法に違反してるとマズい訳です。ローンを使えない物件だと、基本現金で決済しないといけない。

 登記簿謄本を見て問題がなければ、「売りましょう、買いましょう」と合意したら、契約書を作成して、契約事項と決済引渡しについて話し合う。

 注意点
 「境界」 未確定な場合、売主に隣の住人と合意して、境界確定書を作ってもらう。引っ越した後で買主がやる場合、交渉力がどうしても、売主に比べ弱いです。揉めたら、長引きます。前の家主との長い人間関係の上許容していた越境物も、新たな家主には、許容する理由がありません。また、境界線は、双方の所有者の合意で動かせませんが、所有権のラインは、双方の所有者の合意で動かせます。更に善意なら10年、それ以外なら20年で時効所得がかかります。本来なら時効所得後に分筆登記して所有権移転登記するのですが、登記は第三者に主張する場合で、当事者なら登記不要です。新たな買主は、第三者ではなく特定継承人で当事者という事になります。
 境界は、お金といっしょで、感情と密接に結びついてますから、売主の責任なのでお願いしましょう。

 「契約不適合責任」 契約の目的欄の充実が重要。「転売する目的」と記せば、契約書に「再建築不可」(現行建築基準法違反物件)など住宅ローンが通らない情報を載せていなかった場合に売主の責任が問える。あと契約の目的が「居住目的」で居住に支障がある不具合があって、契約書に記されていない場合など。任意規定なので中古住宅は、契約不適合責任を負わないと条項に記す事も多くあります。期間は、個人間で引き渡しから3か月が多い。築年数が古く、修繕管理がよろしくないと、不具合も多いかと。事前に出来るだけ調べ、売主によく聞いて、契約するなら契約するしかない。

「値段」 まず近隣の同じくらいの条件で物件検索をしてみる。それで値段がかなり安いのは、それなりの理由がある。お買い得と受け止めてすぐ契約しないように。早くしないと売れてしまう。自分の都合しか考えられない人は、落とし穴に嵌りやすい。 旧建築基準法で建てた家で、現行再建築不可。銀行ローンが使えなくて、現金一括しか売れない。修繕も管理も不十分で、水道管、排水管の30年の寿命がきて漏れている。屋上の防水シートが古くて、張替が必要で、雨漏りしてる。建物は、住めず解体費用を引いた土地の値段。買った値段と同じくらいのリフォーム代がかかる。水回りの設備を総取り換え。決済が済んで「しまった」と後悔しても遅い。個人間で取引する以上、浮かした金額以上、自分で動いて取引を纏めなくてはならない。少なくても契約書通りに進める。

 「中古マンション」
 耐震基準とは、建物を建築する際に最低でも守らなければならない基準です。1981年5月まで用いられていた耐震基準のことを「旧耐震基準」と呼び、それ以降に用いられている耐震基準のことを「新耐震基準」と呼びます。「旧耐震基準」は震度5強程度、「新耐震基準」では震度6以上の地震が発生しても倒壊しないように、基準が定められています。
 修繕管理費の滞納がないか?マンション事体、修繕管理がちゃんと行われているか?メンテナンス状況、外壁屋根10~15年ごと、防水シートは10年ごと
 売主が居住しているのか、オーナーチェンジで居住者がいる場合、家賃の滞納はないか、毎月の修繕積立金、管理費などいくらか、固定資産税いくらか
など聞く。

引渡し設備一覧に「残置物」と売主が主張したら、壊れていても売主に修理する義務はなく、撤去費用も買主持ち。この場合、居住する目的に対して契約不適合責任は問えない。

決済引渡しは、銀行ローンや登記、扱う書類に印鑑証明書などがあるので、司法書士を間に入れ、本人確認を含め依頼すべきです。電子契約書は、印鑑証明書が必要な高額取引にはなじみません。画像修正ソフトとか使われると想像したくありません。

「契約書」・・・売買の目的、売買の目的物、手付、売買代金の支払い、所有権の移転、担保権等の抹消、引き渡し、所有権移転登記、売買対象面積、引き渡し前の滅失・毀損、公租公課等の負担、契約不適合責任、解除、反社排除条項、融資利用の特約、契約締結費用の負担、協議条項、合意管轄

 

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フランチャイズ契約書 本部の立ち上げ

フランチャイズ研究会 中小企業診断士 山岡雄己先生の誌上講義

 飲食事業を始めてうまくいく。従業員に暖簾分けしてその店もうまくいく。ひょっとするとFC(フランチャイズ)すれば、加盟金とロイヤリティーが入ってもっと拡大できるのでは? それでFCの本部を立ち上げて加盟店を募集しよう。

  FC(フランチャイズ)ビジネスの基本は「契約」です。本部は加盟者にFCパッケージを提供する対価として加盟金やロイヤリティーなどの収入を得ます。役務の提供①商標使用許諾 ②商品取引 ③開業プロヂュース ④経営指導。FCは繁盛実績のあるビジネスモデルを拡大する為の手法です。本部は10店を超えるまで儲からないと言われてます。FCパッケージ(内装、外装、デザイン、発注業者、店舗基本レイアウト、看板、制服デザイン、食器、レジ又は食券機、メニュー表、厨房機器、設備、調理方法、・・・)

 FC本部が販売するのはノウハウです。外食店の売り物は、味、空間、接客。確かに、心地よい場所で、美味しいものを感じの良い店員さんに提供されると、来た時よりも元気になってお店を後にできます。反対に掃除をしてない汚れの目立つ不潔なお店で、美味しくない料理を感じの悪いブスッとして返事もしない店員に提供されても、ゲンナリして店を後にするでしょう。

 本部構築には、内側の仕事と外側の仕事がある。内側の仕事は、チェーン展開の仕組みを作る事。ノウハウ販売なのだから、マニュアルや教育カリキュラムなどのシステムに高い完成度が求められる。例えば、マニュアルは1つひとつの作業方法を定める「標準化」と、複数の作業を同時に進める方法を定める「仕組化」を経て制作します。その際、「カリキュラム化」と「システム化」までをひと括りに捉える事がポイント。
 外部の仕事は、加盟店開発と加盟店教育【開店前研修とスーパーバイジング(加盟店がフランチャイザーのノウハウに従って経営しているかどうかをチェックすること)】立ち上げ時の本部には、そのノウハウが蓄えられていません。属人的なパワーをフルに投入して成功させ、科学的根拠に基づいた支援ができる体制を段階的に整えていく。

 その手段として直営店(標準店)を出して、フランチャイズ加盟店1号として(出店した風にやる)、どこで、なにを、どう売るか」というコンセプトを基に立地や規模、メニュー、オペレーションなどを固めていきます。いろいろなノウハウを蓄積していく。(経験のないオーナーさんだとして、マニュアルを基に同じ味に持って行けるように「ブラックボックスのタレは本部から購入」、仕入先の確認、やることが沢山あり、その他いろいろ問題も起こる。例えばクレーム対応など。
 利益が出せるように持って行って、一定期間(1年程度)検証する。問題を抽出して、検証して解決策を出す。その束がFCの店舗運営のノウハウとなる。FCに加盟しないと得られないノウハウを蓄積する。店舗を出す「立地
」、営業経験がないとわからない。

 そして、フランチャイズの理念の構築。この仕事に対する意義、人と世の中への貢献。反論や反発や揶揄、マイナスの感情が起きようがないスローガン的なもの。人を動かす理念、疲れを癒す理念など。ピュアな感じ。

 スーパーバイザー(チェーン店本部のスタッフとして加盟店を巡回し、本部の経営方針の実行状況を確認し、加盟店への助言をする。不満を吸い上げ本部との橋渡しの役目)の養成。加盟者に対しての話し方、接し方、教え方などトレーナーを兼ねる場合が多い。

 加盟条件の決定 加盟金をいくらに設定するか、法人限定にするのか、反対に個人限定にするのか、フランチャイズが拡大した場合の想定と対応を最初に決めておく。

 そしてフランチャイズ契約書と法定開示書の作成。出店場所を調査して決まってから契約。

 オーナー募集。面接(誰が面接するのか?)~契約。

 

FC本部立ち上げに必要な費用
 (加盟店募集のパンフレット、ホームページ、会社案内の作成費用)~100万円

各種マニュアル作成費用(オペレーションマニュアル、店長業務マニュアル、人事管理・衛生管理マニュアル、危機管理・金銭管理マニュアル、オープンマニュアル、加盟店開発マニュアル) ~500万円

法務手続きに関する費用(契約書作成、法定開示書面作成費用、商標登録費用)~100万円

システム設計・開発費用(システム機器を含む)~100万円

フランチャイズ本部オフィス整備費用(本部オフィス開設、応接設備、専属スッタフの人件費)~500万円

フランチャイズ事業説明会・フェアなどの出店費用 1回数十万円

費用の次は収入

FC本部の収益源(加盟金、補償金、ロイヤリティー、商品マージン、建設費マージン、研修費、システム使用料)

加盟店開発・・・「ターゲット」「募集エリア」「告知方法」を明確にしたマーケティング計画を策定し、効果測定する体制を作る。

加盟店教育・・・メインは開店前研修とSV. 特に重要なのが、開業前の店舗マネジメント研修とマネージャ向けオペレーション研修。ポイントは、現場責任者に作業を「教えるスキル」を習得させる事。そして「SV」・・・ノウハウ提供のコントロール、コンサル、プロモーション。関係構築機能のコミュニケーション、カウンセリング、コーディネーション。

最後にFC契約書に盛り込む事項・・・基本事項(契約の目的、加盟金、保証金、手数料契約期間、経営責任) 契約による権利・義務(本部が提供するもの、商標、経営ノウハウ、経営支援、ロイヤリティー、テリトリー権、禁止行為、有害行為、商標ノウハウの契約外使用、競業禁止)開店(店舗の仕様、変更時の措置、開店前研修、開店準備、許認可など電気水道など含む、開店の不許可) 店舗の運営(営業日数、営業時間、仕入れ及び販売方法、経営責任、雇用、仕入れ、販売、クレーム処理、運営支援、SV派遣、取引の記録、会計帳簿、保険加入、店舗の保守修繕) 契約の終了(開店前解約、中途解約、違約金、解除、解除損害金、店舗の消滅、加盟者死亡による契約終了、更新、再契約、終了時の措置、貸与物の返還、原状回復負担など) 一般事項(契約地位の移転禁止、秘密保持、個人情報保護、損害賠償、遅延損害金、日割り計算、消費税、印紙税、通知方法、裁判管轄) 用語の解説(契約書の用語の定義)

 黄色マーカーは法定開示書の記載事項

契約書作成には、本部を立ち上げて、構想から数年後に準備が整ってから、加盟者を募集して、そして店舗を決めてから、一般的に契約を交わします。

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株式譲渡契約書(M&A)③

事業担当者のための逆引きビジネス法務ハンドブック M&A契約書式編 単行本 – 2018/3/30 塩野 誠 (著), 宮下 和昌 (著)

 事業買収型の取引(企業が営む事業の一部を買収する取引)・・・①事業譲渡 ②会社分割+株式譲渡

①事業譲渡は、権利義務を1つひとつ個別に買主に対して承継する取引の集合体。その事業の根幹である契約の数々(取引基本契約書も結び直すのに交渉が必要。)、社員の雇用契約も対象になるので社員の承諾が必要。雇用契約を結びなおす、又は出向される(転籍出向)ここは丁寧に!環境が変わり、収入面などの不安をしっかり担保させておく。不動産、動産(機械、備品など)出来るだけ詳しく特定しないと、引き継ぐ範囲を明確にしないと当事者間で認識の齟齬が生じ紛争になってしまうリスクがある。

②会社分割+株式譲渡は、子会社を設立して、そこに会社分割で事業を移す。それで子会社株式を買手に売却して経営権を承継させる。最大のメリットは、契約は相手方の同意なくして承継できる。同じように労働者も、同意なく承継会社に承継できる。ただ債権者保護手続きが必要で、銀行の承認が必要な場合が多い。異議を唱えられると実行できない。

 以上のような違いはあるが、その他の契約の構造は株式譲渡契約と同じ。交渉開始、秘密保持契約、基本合意契約、株式譲渡(事業譲渡)契約書の作成と交渉、表明保証、誓約事項、前提条件、デューデリジェンス、バリエーション、クロージング又は解除、補償

 商法には、譲受人が譲渡人の「商号」を引き続き使用する場合には、その譲受人も、譲渡人の営業によって生じた債務を弁済する責任を負うと定められています。債務免責登記をするか、譲渡人の商号を使わないか、どちらか選ぶべきです。

 根回しと話の持っていき方が大事。雑にやると信頼を失うので、相手のメリットも考え、相手の話をよく聞いて(言いなりになるのではなく、話を聞く事が大事)、時間をかけ丁寧に進めていく事が大事。契約書のドラフトを基に作り上げていく感じで。
 例えば、店舗の賃貸借契約の巻き直しは、不動産のオーナーとの交渉。アポをとり、巻き直す経緯を説明し、トラブルなく、間違えなく家賃収入は入ってくると資料などを提示して、誠実に印象良くして安心感を持ってもらう。契約の前提条件や誓約条項。
 店舗の責任者の入社。その事業を率いている人。来てもらわないと不安。もちろん強制はできないが、キーマン条項で、売手に努力義務を契約の条項に入れ、交渉する。

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株式譲渡契約書(M&A)②

M&A契約――モデル条項と解説 単行本 – 2018/2/26 戸嶋 浩二 (著), 内田 修平 (著), 塩田 尚也 (著), 松下 憲 (著)

 対象会社が契約当事者でない場合、契約に規定する行為を行わなかったとしても、買主は対象会社ではなく売主に契約違反を追求することになる。売主が対象会社に契約にある行為をさせ、ある行為をさせないものとすると定めれば足りる。
 代表取締役がオーナー社長で、持ち株を売る事で、会社を売るという想定がシンプル。

前文・目的
 その契約がなぜ締結されるに至ったのかという経緯と当事者の意図について説明を加える事が一般的。

定義
 本契約で使用される以下の用語は、以下に定める意味を有する。(読む人によって用語の意味と解釈が違っていたりズレていたら、行き違いが生じて紛争になる恐れがある。)例えば、営業日というのは、日本において銀行の休日とされる日以外の日をいう。と定義しないと、うちの会社の営業日?向こうの会社の営業日?
 もう一つ「契約等」とは、契約、合意、約束又は取決め(書面か口頭か、また、明治か暗黙かは問わない)をいう。・・・こういう定義がないと、口約束は契約等に入らないのでは?とか、何かしらの兼ね合いで、「社会通念上」とか用語を出して争いになる可能性もある。

株式譲渡
 株式を譲渡する旨の規定は、本契約の根幹をなす必須の規定。本契約の規定(クロージングの前提条件を満たす事と保証表明)に従い売主より本件株式を譲り受ける。

譲渡価格
 双方がそれぞれ対象会社の企業価値を評価し、両者の協議・交渉によって決定される。純資産法、事業計画に基づくDCF法、類似会社法などを選んだりして売主と買主が合意した金額が譲渡価格となる。
 譲渡契約締結から株式譲渡の実行(クロージング)まで、企業価値の調査など時間的ギャップが数か月間ある。その間の財務、取引など対象会社に起きた事は譲渡価格に反映されていない。そこで様々な取り決めを経て譲渡価格を調整する。

クロージング
 まず前提条件が充足してないと延期、契約の解除となります。引渡しと支払を行わない事ができる(walk away)。例えば買手がグループで売上200億円、対象会社の買収金額が50億円を目安に独占禁止法の届出が必要になり、待機期間30日は譲渡ができません。届出義務は買手になります。あと海外が含むと外為法の事前届出が必要。
 前提条件が満たされていたら、日時、場所、株券の引渡し方法と支払方法(株券が発行されてない場合、株式名義書換請求書に売主が記名押印した用紙。それに買主が記名押印して対象会社に提出する共同申請です。)あと譲渡金額調整金の取り扱い(買主が追加で払うのか、売主が受取金額を下げるのか)を経てクロージングが完了します。

前提条件
 クロージング(株券の引渡しと対価の支払)を実行するために買主売主があらかじめすべき事、条件。例えば、表明保証が真実で正確であること。役所関係の手続きを終えてる事。対象会社の役員の辞任届をとっておく事。対象会社の契約の各相手側から契約維持の承諾を得ておく事。財務や収益に重大な悪影響が発生判明してない事。株式譲渡制限の会社は、取締役会(設置してなければ株主総会)の承認を得る事。買主有利な条項にファイナンスアウト条項がある。買主が購入資金の調達ができなかった場合、取引実行の義務を負わない。あとMAC条項、クロージング前に重大な後発事象が発生した場合、クロージングを実行しない事を認める条項。いずれにしても、買主の購入意欲によって、有利な条項を外して、買主の前提条件が重要でない部分が満たされなくても、前提条件を放棄してクロージングに臨める。
 買主が合理的に要請する文書の受取。例えば、役員辞任届、株式譲渡承認の取締役会の議事録など
 キーマン条項、取締役を送り込む為に辞任してもらわなければならない役員がいる一方で、会社の売上や運営に残ってもらわなければならない役員、技術者がいる。その人たちをキーマンと呼ぶ。クロージングまでに辞任していない事。
 差し押さえ命令の不存在など訴訟を係属してない事

表明保証
 日本の制定法には存在しない概念。違反しても契約不適合責任や債務不履行責任には当たらず、損害担保契約という位置づけ。株式譲渡契約上は、表明保証違反は、相手側の義務の前提条件不充足となり、取引の中止とすることができる(クロージング前)。クロージング後は保証対応。
 デュー・ディリージェンスの補完要素でもあるが、売主が情報開示をして、専門家が買収前調査をしても発見できない情報もある。取引の額に対して買収前調査(デュー・ディリージェンス)費用が過大な負担。それなら、売主に表明保証してもらって、後に違反があれば補償という形で解決しましょうという概念。
 個別に内容や範囲を正確に吟味検討をする必要がある。解釈や認識のズレが生じないよう文章には気をつける。また、内容が自分のコントロールが及ばない要素が入らざるを得ないと表明違反となり、契約違反につながり紛争から解除、補償となってしまう。
 対策としては、重要性、重大性の誓約、認識に基づく誓約(売主の知る限りにおいて・・・)、明示のされた表明保証以外については黙示の表明、保証はしていないという確認文言(類推解釈、反対解釈の排除)、開示別紙による表明保証からの除外(ここに書いてある事実は、保証しないという事)いずれにしても曖昧、抽象的な文言は、複数解釈を可能として、認識のズレを生み、紛争の種となる。
 
 設立・存続(ちゃんと法的な手続きを経て設立して運営してる会社ですよ)契約の締結及び履行、強制執行可能性、法令との抵触の不存在、許認可等の所得、倒産手続きの不存在、反社会勢力でない条項、株式の保有等、計算書類等(法に則って会計処理、申告納税してます。簿外債務はないです。重要な変更はありません)、法令遵守、資産(使用に支障が出る負担等はない。担保権が付されてる場合の表示、在庫は適正水準、債権に対して、不動産や知的財産など)契約等(契約は事業の根幹をなすもので、問題を抱えてないか)、人事労務(労組の存在、年金・福祉)、公租公課(滞納はないか、指導や調査が入ってないか)、保険、環境(処置命令が出されてないか)、紛争を抱えてないか

コベナンツ・誓約事項
 契約上の付随的義務にあたると解され、その違反は、保証条項が定められていなくても債務不履行責任を問われる。
 クロージング前に取引の前提条件に必要な行為が為される事を確認する。あよそ表明保証はクロージング「時点」の事、~であること(例えると静止画)。誓約条項は、株式譲渡契約締結からクロージングまでの「期間」をカバーする~すること、~しないこと(例えると動画)。
 当該事項を完全にコントロールできない場合は、「努力義務」として規定する。その強弱の表現もある。最大限の努力、合理的な努力など
 対象会社の運営に関する義務・・・クロージング前に銀行を含めあらゆる所から、借りれるだけ借りてクロージング日の前日を基準日として、2日後に株主に特別配当という形をとったり、表明保証をすり抜ける感じで、動産、不動産を処分して特別配当の原資の一部にしたり、第三者割当増資をしたり、されたらマズいので、事細かくやってはいけない事を決めておきます。例えば、定款変更しないで、株式関係は、売ったり、発行したりしないで、剰余金の配当とかしないで、お金回りの禁止事項が多い。また保証債務を負わないで、新規事業の予算を組まないで、とか誓約事項で止める。通常の業務に終始してくださいと
 他にも、株式の譲渡承認をしてください。法令に基づく手続きをしてください。(独禁法)、契約に基づき必要となる手続き(支配株主が変わっても契約はそのままでという他の相手側の確認)、買主側では、買収資金のファイナンスに関する義務(資金をちゃんと用意して下さいよ)、取引保護条項(交渉は独占で、手続きを進めてる最中、別の買主に売らないで)、デュー・ディリージェンスで発見された問題点の解消に関する義務、表明違反・義務違反・前提条件不充足の場合の通知義務(隠さないで通知してください、ただ通知したからといって対処しなくていい訳ではありません)まだありますが、異常がクロージング前の内容。
 次にクロージング後
株式譲渡が完了しても売主から買主への経営の移管には完全に完了しない。移行期間が必要。企業価値の毀損や雇用の維持等について、売手にも義務を課す必要。
 競合避止義務、勧誘禁止義務、雇用維持義務(買手)、年金・保険料移管義務(時間がかかるので双方の協力が必要)、派遣役員・従業員の責任免除、商号・商標等に関する義務(いつまでも商号を変えないと許諾したと誤解され名板貸責任が生じる可能性がある。連帯債務を負う)売主による情報アクセス(売却年度末の決算書を作成するのに必要な情報がある。

補償
表明保証違反、誓約事項違反その他義務違反は、債務不履行の損害賠償請求は、契約で補償に限定する合意とされる事が多い。契約で決めておかないと民法415条の損害賠償請求に話が移行してしまう。補償条項で金銭的救済処置を明確に決めておく。内容は、違反と損害の関係性を緩和して、補償の上限と下限を決めておく。下限値までの損害は補償せず、上限は、株式譲渡金額の〇%までとする。という建付け。統計的に下限が譲渡価格の0.5%、上限が10%。違反が意図的(willful)詐欺的行為(fraud)の時は上限が外される。これは、契約不適合責任の損害賠償の限定条項で、故意重過失の時を除いてと同じ考え方であろう。あと、補償の期間の限定。
 クロージング後は、契約の解除ができない場合が多いので、しっかり話し合って決めておく。

契約解除
 クロージング前までに表明保証違反、義務違反に重要な違反があった場合、倒産手続きの開始があった場合、〇日までに株式譲渡が行われなかった場合
 ブレイクアップフィー、売主が別の買主に売ってしまい、独占交渉義務に違反した場合など支払われる場合が多い。

救済手段の限定
 通常の損害賠償は、補償条項に限ります。という条項。

秘密保持条項(一般条項)

準拠法・管轄(国内同士なら日本の法律なので取決め不要。

譲渡禁止(契約上の地位)

変更修正(書面によりサインした者のみが変更可能。代表取締役がサインした契約書を、課長が電話口で変更できたら契約が不安定になる。)

完全合意(契約書に書かれたことが全て。事前に協議して交わした合意文書、覚書など効力を失わせる。)

通知(売主と買主の住所、電話、メルアド、ファックス)

第三者の権利(契約した当事者同士を拘束する。第三者の権利も義務も主張を受け付けない

誠実協議(一般条項))


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株式譲渡契約書(M&A)①

 日本の企業数は、約421万社(経済産業省 工業統計表2006年)。そのうち上場してる会社は3944社(日本取引所調べ6月21日現在)上場企業比率0.09%

 日本の企業の99.91%は、上場していない。上場していない会社の株式売買は、相対取引(金融商品取引所を介さず、売り手と買い手が直接に、価格、数量などを合意する取引方法)となります。

 だれから、どのくらいの株数を、いくらで買うのか? 契約書を作って署名捺印をして終了という感じではマズいのです。会社を売却するというのは、発行済株式の過半数以上の株式を売却するといって差し支えないと思います。過半数の株式で、過半数の議決権を行使でき、取締役の任命、解任が可能となります。つまり、自由に経営する事が可能となります。

 会社売却(過半数以上の株式の売却)には、会社そのものを売値に見合うか適正価格か?買手が調査する必要があります。それをデューデリジェンスと言います。英語表記で「Due Diligence」(適正な評価手続き)買収対象としてふさわしいか?損失を被らないか?など複数の角度からリスクとリターンを調査します。目安という相場は、純資産+営業利益の2~3年分の価格。EBITDA(税引前利益に支払利息、減価償却費を加えて算出される利益)倍率×3~5倍。しかし成長性があって、ブレが少なく(低リスク)、投下資本利益率(ROIC)がいい会社は、目安や相場に構わず高い値段で交渉する余地が大きい。もちろん材料があっても、買手を説得する論理が必要。

 全体の流れとしては、交渉開始、秘密保持契約、基本合意契約、株式譲渡契約書の作成と交渉、表明保証、誓約事項、前提条件、デューデリジェンス、バリエーション、クロージング又は解除、補償

 M&Aの契約は、会社法、商法、判例で組み立てられた契約ではなく、英米法を基に組み立てられた契約である。なので英語表記の意味が分からないと、なかなか理解ができない。

M&A・・・「Mergers(合併) and Acquisitions(買収)」の略。意味は、「企業の合併や買収」のことで、2つ以上の会社がひとつになったり(合併)、ある会社が他の会社を買ったりすること(買収)

デューデリジェンス・・・「Due Diligence」(適正な評価手続き)通称略して「DD」買収する会社に対する買手企業の「調査」。調査対象は、ビジネス面(事業の安定性と成長性)、財務面(財務諸表、借入状況)、法務面(許認可を得ているか?訴訟をかかえているか)、買収の障害となる事項の有無や内容、買収対象の適正価格か

アーン・アウト・・・(Earn Out) 対価の分割払いを行う仕組み。調整方法。合意した目標業績を達成した時に追加で買手が売手に支払う条項。売手と買手、双方の主張の乖離を埋める為とか、買手に引き渡すまで、業績が下降しないようにする為の工夫。

クロージング・・・(Closing)経営権を移転する為の最終手続き。株券の引渡しと代金の支払い。株式譲渡契約から、1か月以上あとに株券の引渡しと代金の支払いが行われる。クロージングの前提条件があって、満たされなければ、株券の引渡しと代金の支払いが行われず、契約の解除となる。なぜ解除になるかは、事前に決めた売主や買主の義務の条件が充足されなかったから。双方に義務があり、双方に権利がある。株式譲渡契約をしてデューデリジェンスを経て、前提条件が満たされれば、契約の履行、満たされなければ解除という流れ。

タイムリミット・・・(Long Stop Date)クロージングの前提条件の充足に時間制限を設けて、その期間が経過すれば契約の拘束から解放する為、契約を解除しましょうという合意。

表明保証・・・(Representation & Warranties)契約当事者の一方が、一定の事実が真実であり正確であることを保証するもの。クロージングの前提条件に含まれて、数か月のデューデリジェンスでは、調べ尽くせず辿り着けない情報は、買収対象会社の取締役などに「事実がある事、また事実がない事」を表明し補償してもらう事。例えば、簿外債務はありません。税金の滞納はありません。許認可は受けています。など。違反すると、クロージング前だとクロージングに至らず。後だと金銭での補償となる。
 ここも、「知る限りは」とか「知りうる限りは」など緩める書き方もある。前者と後者の違いは、調査をするかしないかの違い。知りうるとは、一般的な調査をした結果。
 価格調整機能と情報開示促進機能が、表明保証となる。

コベナンツ・・・(Covenants)当事者に対して一定の事を行う事、行わない事を約束する事。
 クロージングより前のをプレ・クロージング・コベナンツ。後のをポスト・クロージング・コベナンツという。
 クロージングより前にやる事は、他の契約に「経営上大きな変化があった場合は、解除する事ができる。」が条項にあった場合、そこをフォローしておいて下さい。とか許認可関係での手続き、役員の辞表を取りまとめておいて下さい(買手側が経営権を入手してから解任すると損害賠償が発生する場合がある)、売手ばかりでなく買手にも、グループで売上200億あって、買収する価格が50億以上なら独占禁止法の手続きをして下さいとか。
 クロージングより後は、従業員の雇用継続についてなど

ファイナンス・アウト条項・・・買主が買収資金を調達できなかったら、取引義務を負わない。買主が有利な条項。

MAC条項・・・(Material Adverse Chang)譲渡契約の締結日からクロージングまでに、対象会社に重大な悪影響が生じていないことが、買手側の義務履行の前提条件として定められる。後発重大リスクを売主に負担させる条項。売主は、条項に入れないでと求められる。

ノー・トーク条項・・・(No-Talk条項)売主(売却対象会社)と第三者との対抗提案につながる協議・交渉を禁止する条項

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