代理店契約書

実践!! 契約書審査の実務〈改訂版〉 単行本 – 2019/3/14 出澤総合法律事務所 (編集)

 契約のイメージとしては、例えばイタリアの南部にパスタを作ってるメーカー(製造元)A社がある。日本のB社は、イタリアのA社から輸入して日本で売りたいと考えている。A社は、日本での販売の手段や販売ノウハウを持っていない。一方のB社は日本での販売ノウハウや販売網を持っている。A社とB社は販売の提携をして、お互いのビジネスを発展させる事ができる。この契約は、取引基本契約であり、個々の個別契約の条項を補う契約である。

 B社は、A社の日本の代理店として、委任契約を結んで、A社の製造したパスタをA社の為に日本の顧客に売る契約を行う。その顧客が売買契約をするのは、A社である。B社はあくまで代理店としてパスタを販売する。値段は最終的にA社が決めて、販売した手数料をA社から受領して。B社は売上とする。返品がきくので在庫リスクは負わない。

 契約当事者は、A社と日本の顧客です。パスタの販売価格はA社が決めます。B社の利益は、パスタを売った事による手数料で。在庫リスクはA社が負います。

 一方、代理店契約と類似で、「販売店契約」というものがある。代理店との比較で、販売店は、A社からパスタを仕入れ、B社が顧客との間で契約当事者になり、パスタの販売価格はB社が決める。在庫リスクは、B社が負う。また日本のある地域において販売独占条項を置くと、製造元のA社もその地域でパスタを販売できない(テリトリー制)。その為、A社から最低販売数量が設定(クリアできなければ逸失利益分の損害賠償が請求される。)されて、B社はその販売最低ラインをクリアしなくてはならない。加えて商標の仕様も許可され、販売促進等にも条項があり、競合品の取り扱いにもA社からの要求がある場合がある。また商品が改良された場合、取り扱いはどうするのかについての条項もある。あと契約期間。自動更新条項で長く更新していると製造元からの解除が争いになる場合がある。

 契約の注意点としては、まず別紙で扱う商品を特定する。そして代理店、販売店として行う業務をしっかり特定する(業務の明確化)。次に代理店の手数料の発生時期と支払方法。顧客に商品を売った時(例えば5月に引き渡す)、顧客が入金した時(月末締めで翌月払いで、入金が6月)手数料発生から支払を受ける日は、それぞれ1ヶ月ずれる。細かく決めないと認識の齟齬が表面化して紛争の種となる。顧客の入金先をどうするのか、製造元か、代理店か、例えば、代理店が支払いを受けて、手数料を引いた金額を製造元に振り込むのか、ちゃんと決めないと揉めます。人それぞれ常識が少し違うし、決めてない事は、それぞれ自分に都合のいい方に考えますので、細かく認識を一致させて文書に落とすことは大事です。

 上記の例は、わかりやすく海外と日本という設定にしましたが、国内で製造した商品を国内で売ってもらう為に代理店を募集する事はよく行われています。

 応募があって条件にあった代理店と契約をするのですが、一般的には販売促進をして顧客を開拓して、紹介して下さい。説明と契約はこちら側でやります。次に説明と契約まで任せます。なのでその都度、条項で通知義務を定めますので報告して下さい。代理店にどこまで任せるのかを明確に定めておく。そして通知・報告義務を課して状況を把握できるようにしておく。製造元に顧客から苦情がくる。「契約の前に説明を受けたのと違う。」製造元は、代理店に問い合わせる。「どういう説明をして売り方をしているのか」もし通知・報告義務を明確に細かく定めてないと「順調ですよ。ちゃんとやってますよ。問題ないですよ。」でかわされてしまう。製造した商品だけを納品すればいいだけの契約にすると弊害も出てくる。そこで禁止事項と契約解除条項をリンクして定める必要がある。「自分のメリットしか考えないのも結構ですが、デメリットも含めてメリットを考えて下さい」という契約条項。加えて製造元からすれば、再委託の禁止(事前に書面での許可を得る事)や立入検査条項(報告をお願いしても引き延ばして埒があかない。何をやってんのかわからない)が入れば効果的。

 例えば、特定商取引法の規制対象となる「電話勧誘販売」。営業電話がかかってきて断っているのに、また何度もかかってくる。」これは、再勧誘の禁止(法第17条). 特定商取引法は、電話勧誘販売に係る契約等を締結しない意思を表示した者に対する勧誘の継続や再勧誘を禁止しています。
 「営業は、断られてから始まるもの」とか電話営業では通用しなくなっている。法令に違反する勧誘行為。その他競業避止、類似製品の並行代理など

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