民法を武器として使いたいビジネスパーソンの 契約の基本教科書 単行本 – 2021/4/21 長瀬総合法律事務所 (編集)
・表題、タイトル、題名(売買契約書、合意書、覚書、念書、誓約書)
表題にはいろいろ呼び名がありますが、一番上に表示されるものです。契約は内容で判断されますので、あまり重要な個所ではありません。ソフトな印象な合意書とつけても内容が契約なら、その文書は契約書となります。普通は取引の実態を反映させた契約書名をタイトルとします。第三者が見てもわかりやすく全体を表すタイトルが好ましいでしょう。
・前文
契約当事者が表示され、甲、乙などの略語に表示しますと記す。文中その都度、当事者の住所氏名を表示していたら、無駄に長くなり読み辛くなってしまいます。略語は、甲乙や権利者、義務者、苗字など使われますが、一文字の甲、乙が主流です。
そのあと契約の内容を表す「~契約を締結する」と表記。そして~契約を(以下「本契約」という。)と記す。
・目的
どういった理由で取引、契約をするのか?そして契約書を作成するのか?を簡潔に記す。目的条項のない契約書もありますが、契約の目的を達せられない状況に陥った時、契約を解除するためのトリガーとなりますので、しっかり書くことをお勧めいたします。例えば不動産の転売目的で購入、転売相手がローンを組む時に道路と高さの関係があって組めなかった。契約不適合責任の売買契約の解除の根拠が、契約書の目的となります。売る方も、契約の目的を見て「ローン使いますか?」と確認してローン審査が通らない物件だとわかっていれば、紛争は避けられたのです。また、道路に面している部分が足りないため、「建て替え不可物件」も、「建て替えず乙が居住する目的で買い受ける」と記入しておけば、解除を防げる。その他契約の目的が達せられないのに、本契約に拘束されるのは、不利益な面が多いのではないでしょうか?
目的も第一条2項に「甲及び乙は、本契約に基づく売買を、相互利益尊重の理念に基づき信義誠実の原則に基づいて行うものとする。」こういう反対しにくい文言を入れておくと、目的欄を削除してとの要望は出にくです。(目的欄を嫌がる方もいます。契約解除の根拠とされる条項だからです。)
・各条項
権利義務の内容。契約当事者が、相手側に~してもらう権利(債権)相手側に~する義務(債務)を合意内容として契約書に記す。
民法第91条 法律行為の当事者が法令中の公の秩序に関しない規定と異なる意思を表示したときは、その意思に従う
つまり、法令があれど公の秩序に関係のない規定(任意規定)であれば、法令ではなく当事者の意思を尊重していいですよ!と民法第91条は謳ってます。
また契約自由の原則、私的自治の原則もあり、契約は当事者の合意で成立し、紛争が起きれば、裁判まで行けば裁判官は契約書で判断されます。
なぜ当事者の合意で決めた契約に違反すると「違法」と表現されるかは、契約を支えてる法令があるからです。
不必要なトラブルを避ける為、わかりやすい表現で書く事です。専門用語は解釈上の争いになる場合があるので、契約書に「定義」としてわかりやすく解説文を入れるべきです。基本ですが、読んでなくても、内容を理解してなくても、署名捺印又は記名押印すると「読んで内容を理解した」と判断されます。
・一般条項(契約や取引に関わらず記されていることが多い条項)
・譲渡禁止特約・・・契約自由だから当事者の地位を別の誰かに売却してしまう。繰り返されると、今、誰と契約しているのかわからなくなり、契約状況が不安定になる。少なくても、相手側の書面による承諾を必要とすべき。
・反社条項・・・これは相手から反社とみなしてるの?と思わせてしまうかもしれませんが、内閣の方針により都道府県が条例を制定し契約書等に記入するのは努力義務となっています。銀行、証券、不動産、建設会社、ホテル、ゴルフ場など記入されていることが一般的であります。付随して「大声で威迫しない」という条項を盛り込んで、パワハラの予防策になります。
・秘密保持条項・・・これは、どこの世界でも口の軽い人は嫌われるとおもいますが、そのレベルではなく実害が生じます。取引を交わすなかで知り得た内部情報をライバル会社に売ったりされると、大変な事態に陥ります。条項とは別に、一つの独立した秘密保持契約(NDA)として交わす事も主流になってます。
・中途解約解除条項・・・不動産のサブリース契約などの契約書には存在しない条項です。解約させたくないからなんでしょう。載せてなければ民法の規定になります。「中途解約は契約上決めていませんので、できません」こういう事を平気で言う方いますのでお気を付け下さい。
・危険負担・・・当事者の責任によらず、例えば地震で損害が発生した時、どちらが負うのか?を決めた条項。一般的に商品を引き渡す前は、売主。引き渡した後は買主。
・損害賠償条項・・・損害を受けた側が、話し合いで解決しなければ訴えて損害の立証をしなくてはならないので、大変な労力です。弁護士費用を含むと入れていた方がいいです。裁判所で損害の立証を避けるには、違約金として〇〇〇万円として決めておくのもいいですが、契約は相手があることですから、ここはよく話合わないといけません。米国みたいな懲罰的損害賠償は、日本では採用されておらず、基本受けた損害が基準です。ITシステム会社などは、報酬額を上限として賠償します。としてる場合がおおいです。
・契約の更新・・・自動更新にして6か月前まで解約の申し入れがない場合1年更新される。とするか、契約の一方(甲又は乙)が6か月前までに更新を求めた場合(甲又は乙)が同意した場合、契約は1年更新される。続けたい契約か1年で終わらせたい契約か、契約書を作る側で調整ができます。もちろん修正依頼で提示される側も載せられますが。
・誠実協議条項・・・関係が悪化しても話合いの糸口となる条項です。いきなり裁判所に持っていかないで、契約書に話合おうって書いてありますので腹を割って話し合いませんか?と使える条項です。拘束力は弱いですが、記載されている事が多いです。
・裁判所管轄条項・・・本来なら訴えらる側(被告)の住所地の管轄の裁判所です。専属と書かないと意味がありません。名古屋の元請けが埼玉の下請けに機械を発注して、性能が満たされず受取拒否となった事例。下請けが支払を求めて訴えようにも、元請けが作った契約書の専属裁判所は、「名古屋地裁」弁護士を依頼して日当10万円と往復交通費+宿泊代。名古屋地裁に訴えて、埼玉地裁に移送申し立てをして、管轄の移送だけの決定に1年かかった事例があります。契約書の内容は重いです。
・印紙税・・・契約書の種類と取引金額で決まります。貼らないと本来の3倍の金額(表現を変えると本来の印紙税と2倍の印紙税が必要。)
貼らないと契約の効力が無効になるのか?ある金融ドラマで、かわいそうな方が、無理やり契約をさせられた。そこで主人公が、契約書に印紙が貼ってないのを目につけ、悪い会社に一緒に行って「印紙が貼ってない脱税文書に効力はない」とタンカをきって無効にさせた。そういうストーリーがあったと記憶してますが、実際は、印紙を貼ってなくても契約の効力には影響ありません。電子契約書には印紙税は不要です。
・ハンコ・・・捨印はしない事。捨印は全部手書きで契約書を作っていた頃のものです。また、捨印を使って部分的に書き換える事は可能です。金額を書き換えれます。1は4に変えられるので1は壱と表記が推奨ですが、兼ね合いの問題になります。割り印、契印もちゃんと作法に乗っ取ってやりましょう。
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