業務委託契約書の作成と審査の実務〔全訂版〕 単行本(ソフトカバー) – 2022/11/13 滝川宜信 (その他), 弁護士法人しょうぶ法律事務所
業務委託とは、会社が行う業務の一部を効率化や経費圧縮の為に外部に委託する事です。アウトソーシング(外部委託)のニュアンスで、外部の専門性の高い業者や個人事業主に仕事をお願いする。
契約は、「請負」「準委任」のどちらかの形で締結される。
「請負」は、仕事を完成させなければ報酬を請求できない。(民624条,633条)契約不適合責任を負い、下請けや再委託は可能。そして注文者は、損害を賠償して解除が可能。例えば、建築工事やソフトウェア開発、設備製造委託契約
「準委任」ちなみに「委任」とは法律行為の委託です。不動産の登記を法務局に申請する為司法書士に依頼するのは、法律行為なので委任です。準委任とは、それ以外の事実行為、一定の事務の処理委託などです。例えば販売委託、コンサルティング契約、完成を目的としない作業、一定の成果物を伴う事務作業など。報酬は、特約がないと請求権が発生しない。また事務の処理に善管注意義務を負う。(民644条)再委任は信頼関係に基づいているので原則禁止。当事者はいつでも解除可能。
契約書を作らないと、民法はザックリ過ぎて複雑な業務に追いつかない。例えば、シンプルな例、ある日、風呂釜が壊れて業者に取り換えを依頼。電話で「いくら位?」と尋ねて値段が合えばお願いして、作業日を決めて。取り替えてもらってお湯が出て、不都合がないかを確認して問題がなければ保証書と請求書を置いて業者が帰る。後日、代金を銀行振り込みして終わる取引。契約書は、消費者保護法もあって不要かとおもいます。
他方、法律に規制が入っていて、仕事の工程が複数あり、金額も高く、人が多く動く取引はどうでしょう?
製造委託契約の場合、製造仕様書を定め品質、包装、様々な基準を設けて原材料の指定。納期を決め、完成した製品の納入場所を指定(引き渡し費用は受託者)納品した製品の委託者による検査、納品後何日以内の検査、終了通知がない場合、全品合格扱いにする規定、基準外製品があった場合の取り扱い、代品納入か補修か代金減額か?製品の所有権移転時期は、納品後とするのか、検査で合格した後にするのか?また引渡し前、引き渡し後、地震が来て壊れた場合に委託者、受託者どちらが費用負担するのか?
そして代金支払い方法。いつ、どこの口座に振り込むのか?(振込手数料は委託者)
契約不適合責任、納入検査で発見できない欠陥などは、民法は発見した時より1年以内となっていて、契約に決めないと最大、時効の10年まで拡大してしまう。引き渡しから1年に設定するのが主流です。その他契約不適合責任に関する取り決めがいくつか、受託者が履行しない時、契約解除、損害賠償の扱い。
製造物責任法に対する委託者、受託者の取り決め。保険に入った謄本を委託者に提出。(PL法)製造物の欠陥が原因で生命、身体又は財産に損害を被った場合に、被害者が製造業者等に対して損害賠償を求めることができることを規定した法律
また仕様書、製造過程で知的財産が生じた時の取り扱い、また他の知的財産を侵害してしまった場合の取り扱い。
委託者の受託者工場への立ち入り権限条項と実施の取り決め。事前に許可を得て営業時間ないに限るなど。
委託者の仕様書など受託者に対する秘密保持契約の取り決め。片務条項にするのか総務条項にするのか?
再委託は禁止するのか?事前に書面による許可制にするのか?委託先に秘密保持契約を求める条項を入れ、実効性をどう担保するのか?
契約当事者の権利譲渡を禁止して、解除する場合は何か月前に申し入れるのか?また信用不安、手形の不渡りなどが生じた場合、即解除できるよう条項を入れておく。
そして反社条項を入れ、損害賠償条項、免責条項、残存条項で秘密保持契約と裁判管轄を残しておく。そして協議解決条項。
大きな契約は、当事者同士の合意で完結するのではなく、特別法に牴触しないよう契約条項にクッションを入れなくてはならない。請負契約でも、直接指示命令すると労働者派遣法に牴触し、偽装請負と見なされてしまいます。指示命令は、必ず請負会社の現場責任者経由で。直接受託会社の社員に指示命令しない事を委託者の社員に徹底。そして下請法。委託者の資本金と該当業種が要件となります。義務と禁止行為が生じます。3条書面交付義務。3条書面の内容を契約書に盛り込む。支払は2か月以内。その起算日を誤らない事。そして個人情報保護法。この法律の管理責任にリンクして受託者の事務所や工場に立ち入り検査条項を設定しなくてはなりません。
仕事を円滑に進めていくには、決める事が沢山あり、「言った言わないの不毛な樹海」に入らないよう契約書作成は必須な事と思います。
業務委託契約は、業務内容をしっかり記入する事。双方の認識の差を詰める話し合いが大事です。
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