雇用契約書(就業規則なし)

労使トラブル円満解決のための就業規則・関連書式作成ハンドブック 単行本 – 2023/11/19 弁護士 西川 暢春 (著)

 上記の本は、とても優れています。良書です。縦26㎝ 横18㎝ 1241ページ。就業規則を作るのに心強い一冊です。労務関係の契約は、労働3法「労働基準法」「労働組合法」「労働関係調整法」が強行規定となっていて、当事者同士による合意でも、頻繁にその契約を裁判で否定されます。ほぼ労働者側に寄り添って判決がでる場合が多いです。

 就業規則は、常時10人以上の従業員を使用する使用者が作成して労働基準監督署に提出しなくてはなりません。代行を依頼できるのは、「社会保険労務士」か「弁護士(企業法務を扱ってる)」になります。

 「雇用契約書」(会社と従業員が労働条件について互いに合意したことを証明する書類)とどう関係があるかと申しますと、雇用契約の内容が就業規則があればリンクさせなければならない事です。そもそも雇用契約は、口頭でも成立します。雇用契約書は、絶対に必要ではありません。しかし、「労働条件通知書」は(労働基準法第15条第1項)通知が義務付けられている。通知内容は、労働契約の期間、契約の更新の基準、就業の場所(2つ記入。雇い入れ時、変更の範囲)、従事すべき業務(2つ記入。経理、会社の定める業務)、始業終業の時刻、休憩、休日、賃金、退職。絶対的明示事項と相対的明示事項(企業が制度を導入していれば明示)があります。
 ※有期雇用労働者(パート、契約社員は、「更新上限、通算雇用年数」。「無期雇用転換項目(1年契約を4回繰り返して5年。これを1日でも超えると無期雇用の申込ができて、会社側はその申し入れを拒否できない。申し入れた期間が終わった後に無期転換される。それを5回目の更新で書面で明示しなくてはならない)更に無期転換後の労働条件変更があるのかも記入する必要がある。無期雇用労働者は正社員を意味するものではない。

 雇用契約書と労働条件通知書は、ほぼ内容が一致するので、「雇用契約書兼労働条件通知書」という書式で、合意と法定通知を一緒に取り交わすのがいいかと思います。(内定時)に通知契約を交わす。入社日に通知すると、「こんな事聞いてない」という話になる場合がある。

労働条件通知書の内容は一覧で表示して、たとえ重複しても雇用契約書で記す。

雇用 雇用し賃金を支払う事を約束し、誠実に指揮に従い勤務する事を約する。と最初の条項で記す。

雇用期間 正社員は「期間の定めのない契約とする」(試用期間3か月。延長する場合あり)でパートタイムは最長3年。1年ずつ更新していくのが普通。累計5年を超える事に注意。

就業場所 本社、会社の所在する場所(トラブルになりやすいので丁寧な扱いと合意が必要。限定する書き方あり)あなたは転勤対象であり転勤があるという事を書面と口頭で説明する。

業務の内容 〇〇及びこれに付随する業務。必要がある場合、使用者の定める業務、指定する業務に変更できる。契約書を作る側が幅を持たせられる。広めに書いておく。特定業種のみで採用すると、他の業種変更できなきなる。職種限定採用は硬直性が伴う。

誓約 会社規則や業務命令等を遵守し信義誠実に勤務する。など機密漏洩しない、競合避止、名誉を棄損しない(ネットに書いたりしない)

就業・休憩時間 9時から18時就業。12時から13時休憩。8時間+1時間とする。残業があるかないか。使用者は、業務上必要がある時は、時間変更でき、ある場合、時間外労働を命ずることができる。事業によって変形労働制も活用

※労働基準法では、原則として、1日8時間、1週40時間までしか労働者を働かせることはできません。また、1週間に1日は休日としなければなりません。もし使用者がこれに違反すると、「6箇月以下の懲役又は30万円以下の罰金」という刑事罰が用意されているほど、この原則は強いものです。ただし、サブロク協定を締結し、それを労働基準監督署に提出することで、例外的に1日8時間・週40時間を超えて働かせても、また、1週間に1度の休日に労働させても、使用者は刑事罰を受けなくて済むことになります。このように契約自由の原則や当事者の合意より優先されるのが、強行規定(この場合労働法)

休日 土日祝日 有給休暇(年次有給休暇は、雇入れの日から起算して半年間継続勤務し、全労働日の8割以上出勤した労働者(管理監督者を含む)に、年10日の有給休暇を付与することが法律で義務となっています。)待遇を上げる合意は可能だが、下げる扱いは難しい。

休職 3ヵ月とする。3ヵ月を過ぎると自然退職とする。(この項目がないと自然退職が使えず、解雇という形をとらざるを得なくなる。)

給料 基本給や通勤手当など総支給額。加えて所定時間外手当の説明。就業規則があれば、「詳細は就業規則による」とリンクさせる。そして支払方法。毎月末締め、翌月25日払い。その他賞与、昇給など(~により支給しない場合がある、改定しない場合がある)記入。

懲戒 ここが雇用契約書の重要な個所。他の条項は、労働条件通知書の解説のような位置づけであったが、この懲戒は、やってはいけない事、やるべき事の確認ができる。例えば、無断又は正当な理由なく遅刻、早退を繰り返す、欠勤を繰り返す、業務命令に従わない、会社のPCなど私用目的で使用するなど別紙で最低20項目は記入する。

解雇 以下の場合30日前に予告し、又は30日分の平均賃金を支払って解雇する事ができる。身体、精神上の障害により業務に耐えられない時、著しい勤怠不良で改善の見込みがない、労働能率が著しく劣り、改善の見込みがない、事業の縮小その他やむを得ない事由がある時など

退職 1ヵ月前までに書面で退職を願い出て、使用者がこれを承認したとき、又は届けて2週間が経過した時、無断欠勤が連続30日続いた時、定年になった時、死亡した時など

その他事項 

提出書類 免許書コピー、源泉徴収票、年金手帳、身元保証書(5年更新)、資格や卒業証明書 (ちゃんと指定した書類を集めて提出するかで人間性が垣間見える。)

裁判管轄 労働裁判は、使用者に圧倒的に不利なので、裁判管轄は記入しない。雇用契約書や就業規則などは、経営者や真面目に業務を行っている社員を守る為にあります。問題社員の対処の為です。他所でトラブルを起こした方は、トラブルを起こしやすいです。真面目でない方は、入れない。そして、労働裁判に行かないようなるべく話し合いで解決する。

特定技能制度の実務―入管・労働法令,基本方針,分野別運用方針・要領,上乗せ告示,特定技能運用要領,審査要領― 単行本 – 2020/5/27 山脇 康嗣 (著)

 特定技能制度を使って外国人を雇用する場合、日本人以上に労働法令の厳守を求められます。外国の送り出し機関、日本の受け入れ機関、監査機関、違反すると、繰り返すと制度から排除され、特定技能上で外国人を雇用できなくなります。それは、相手国との約束で不当に労働させない。という事で、その担保が、労働法令を守らせる事と監査という形で制度設計されています。

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